初めての道尾秀介作品の「シャドウ」を読みました
みなさんこんにちは!
今回は初めて道尾秀介作品を読みましたので、あらすじと感想を書いていきたいと思います!
第7回本格ミステリ大賞受賞作
この作品は東京創元社が発行する推理小説で、第7回本格ミステリ大賞受賞、このミステリーがすごい!で3位、本格ミステリベスト10で6位、週刊文春ミステリーベスト10で10位にランクインした作品で、過去に執筆された「向日葵の咲かない夏」に寄せられた読者の言葉への、作者なりの回答として執筆された作品となっています。
物語の内容
登場人物
我茂洋一郎 (がも よういちろう)
相模野医科大学の付属病院で働いている。
過去に精神病を患い、現在は田地の紹介で大学病院の清掃員として働いている。
我茂咲枝 (がも さきえ)
洋一郎の妻で、大学の後輩。
我茂凰介 (がも おうすけ)
洋一郎と咲枝の息子。小学5年生。
水城徹 (みずしろ とおる)
洋一郎と同じ大学の同級生で親友。
相模野医科大学の研究員として働いている。
水城恵 (みずしろ めぐみ)
徹の妻。咲枝とは大学の同級生で親友。
水城亜紀 (みずしろ あき)
徹と恵の娘。凰介とは同じ小学校に通う同級生で幼馴染み。
田地宗平
相模野医科大学の非常勤の精神科医。相模野医科大学でも講義などをしている。
洋一郎と徹の大学時代の恩師。
咲枝と恵とは洋一郎と徹が大学院生時代に田地先生の大学の講義の手伝いの際に出会う。
あらすじ
洋一郎と凰介の視点をメインに描かれる。
2人の母親の死
咲枝は癌で死亡しました。
そして咲枝が死んで間も無く恵が自殺しました。
恵を殺したのは自分だと徹は言いました。
徹は精神を病んでおり、実は二年前からゴミ箱に捨ててあった性液のついた紙くずを見つけたことにより恵の不倫を疑ってから恵と亜紀とはほとんど話しておらず、亜紀は自分の本当の子供ではないと思っていました。
それからほとんど家にいる時間がなくなり、コミュニケーションが取れなくなっていったのだそうです。
そして亜紀は恵が死んだ次の日車に飛び込んで腕を骨折してしまいました。
その頃洋一郎は精神に異常をきたし、行動がおかしくなり始め田地の治療を受けます。
性的暴行を受けた過去を持つ亜紀
亜紀は凰介に過去にある人物から性的暴行を受けたことを話します。
そして亜紀は精神を病んでいる徹と一緒に居たくないと凰介の家に居候することになるが、薬の副作用であることがわかり家に帰ります。
落ち着いた亜紀は母である恵の自殺の真相を、現場である大学の屋上で話し始めます。
実は亜紀も自殺しようとしていたが怖くなって恵だけを死なせてしまったこと、その際に腕の骨が折れてしまったためにカモフラージュするために自分からクルマにひかれたこと。
飛び降り場所に大学を選んだのは夫である徹と、それから精神科医である田地の心に傷が残るように二人の職場を選んだこと。
亜紀に性的暴行をしたのは田地で、水城家のゴミ箱にあった性液のついた紙くずも田地のものだったのです。
亜紀は田地を殺したいと強い願いを口にしました。
田地を屋上から突き落とす
恵が自殺をしてから進入禁止となっていた屋上で亜紀と凰介がそんな話をしていると、足音が聞こえたので機械置き場の物陰に隠れます。
足音の正体は田地で、恵が飛び降りた箇所に供えてある花束の元に歩いて行きます。
すると隠れていた亜紀が突然走り出し、後ろから田地の背中を押し屋上から突き落としてしまいます。
しかし田地は亜紀の体を掴みます。
凰介は亜紀が連れて行かれないように田地の腕を殴ろうとしますが手が届きません。
そんな時に後ろから洋一郎が現れ掴んでいた田地の腕を殴り、地面に落としました。
咲枝も田地の被害者だった
洋一郎が屋上に現れたのは亜紀と同じく田地を殺害するためでした。
殺害をしようと思ったのは咲枝が田地から性的暴行を受けていたからでした。
精神病で仕事を失った洋一郎に清掃員の仕事を与えたのは大学時代の恩師であった田地で、元々咲枝に対して好意を抱いていた田地は、応じなければ陽一郎から仕事を奪うと脅し、癌の治療で体が弱っていた咲枝を病床で暴行をしました。
そのことを咲枝から聞いていた洋一郎は田地を屋上に呼び出し、亜紀がしたように突き落とすつもりで隠れていました。
そこにたまたま現れた凰介と亜紀が田地から暴行を受けた話をしているところを聞き、殺害に迷いがあった洋一郎は決意を固めました。
新しい生活へ歩き出す4人
洋一郎はその後捕まることはなく元の生活に戻りました。
田地の真相を知っているのは洋一郎と凰介、亜紀だけですが、徹も亜紀を本当の娘だと信じるようになり、我茂家と水城家の4人が前向きに新しい生活へ向かうところで物語は終わります。
感想
もう非常に面白かったです。
最初は絶対に洋一郎がこの一連の事件の黒幕だと思っていました。
この事件が解決した後の凰介はどうやって生きていくんだろうと心配までしていました。
それが疑いもしていなかった田地が本当の黒幕だったことで騙された!と思いました。
恵が亡くなった頃、洋一郎は精神がおかしくなったような言動がありましたが、実際は田地を殺害した際に罪が軽くなるように精神病に罹ったような演技をしていました。
さらに、凰介と洋一郎が小学校の運動会から体調不良で早退した亜紀にアイスを買って帰る際、朝使ったガスコンロを切ったかどうか不安になったので、凰介が先に帰り洋一郎だけ亜紀の家に届けに行きましたが、その後の描写が亜紀が性的暴行を受けた後かのようでした。
それは亜紀が恵と自殺しようとした際に怖くなって柵に足を引っ掛けたことによる、下半身への違和感の描写でした。
そのほかにもいろいろありましたし、完全に読者を洋一郎へ注目させようとしていますよね。
しかし凰介に対する態度は優しい父親そのものでしたし、ひとつ引っかかったのは、精神病の治療の一環で健康診断を受けている際に、田地が見ていない一瞬、凰介に対し2人だけにしか分からない「L」のポーズをしたことでした。
そのポーズは明確な意味はないのですがポジティブな意味を持っていました。
結末を知った後に読み返すと、それはまともな精神状態であることを表していたのだなと分かります。
いきなり2人の死から始まってどうなるのかと思っていましたが最後は乗り越えて進んでいけそうな予感がしてとても安心しました。
亜紀の名前も呼部ことができない思春期の凰介ですが母の死をきっかけに成長し、亜紀や洋一郎の支えにもなっている姿を見ることができました。
自分のできることで周りを支えていく姿を見て自分も何か勇気づけられたようで読んでよかったなと思いました。
悲しいことや辛いことがあった人など、立ち直ることに悩んでいる人や勇気付けられたい人、またすっきりとした読み応えを求めている人にはぜひ読んでみてほしいです。
内容がショッキングな面もありますので苦手な人もいるかと思いますが、読もうか悩んでいる方の参考になれば幸いです。
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
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